なぜOn Holdingを学ぶのか
On Holdingは、スイス発のスポーツウェアブランドです。On Runningとして知られ、CloudTecなどの独自技術、洗練されたデザイン、プレミアム価格で世界展開しています。
起業家目線で面白いのは、巨大ブランドが強いスポーツ市場で、機能性だけでなく「新しいブランドらしさ」を武器に成長している点です。Nikeやadidasと同じ土俵で戦うのではなく、健康、移動、都市生活、プレミアム感を組み合わせてポジションを作っています。
Onの強さは、ランニングの機能価値を入り口にしながら、都市生活者のプレミアムスポーツウェアへ広げていることです。一方で、高成長を維持するための在庫、販路、ブランド希薄化、競合模倣がリスクになります。
会社概要
| 会社名 | On Holding AG |
|---|---|
| 国・地域 | スイス、グローバル展開 |
| 業種 | ランニングシューズ、スポーツウェア、DTC、卸売 |
| 主な商品 | Cloudシリーズ、ランニングシューズ、アパレル、アクセサリー |
| 分析対象期間 | 2025年通期、年度末は2025年12月31日 |
ビジネスモデルの骨格
Onは、シューズを中心に、アパレルとアクセサリーへ広げるプレミアムスポーツブランドです。2025年通期の売上は30.14億スイスフランで前年同期比30.0%増、粗利率は62.8%、調整後EBITDAマージンは18.8%でした。
チャネル別では、DTC売上が12.61億スイスフランで33.7%増、Wholesale売上が17.53億スイスフランで27.5%増です。直営店・自社ECでブランド体験を作り、卸売で世界の専門店や小売店に広げています。
地域別では、Americasが17.40億スイスフラン、EMEAが7.63億スイスフラン、APACが5.11億スイスフランです。特にAPACは96.4%増で、グローバルブランドとしての伸びしろが大きいことを示しています。
3C分析
Customer: 顧客
顧客は、本格ランナー、健康志向の都市生活者、仕事でも休日でも使えるスポーツウェアを求める層です。単に速く走るためではなく、毎日の移動や自己管理の象徴として買う人も多いと考えられます。
Company: 自社
強みは、Swiss engineeringというブランドストーリー、独自ソール技術、軽量でミニマルなデザイン、DTCと卸売の両立です。2025年はアパレルとアクセサリーが合計で売上の7.0%まで伸び、シューズ専業からtoe-to-headブランドへ進んでいます。
Competitor: 競合
競合はNike、adidas、ASICS、HOKA、New Balance、Brooks、lululemonです。競争軸は、ランニング性能、デザイン、ブランドの新鮮さ、店舗体験、コミュニティ、価格帯です。
起業に活かせること: Onから学べるのは、成熟市場でも「新しい見え方」と「語れる技術」を組み合わせれば、後発でもポジションを作れることです。
顧客像・STP
| Persona | Needs | Buying Trigger | Key Objection |
|---|---|---|---|
| 都市型ランナー | 走れて、街でも浮かない靴が欲しい | ランニング開始、買い替え、旅行 | 価格、耐久性、足への相性 |
| 健康投資層 | 日常の移動を快適にしたい | 通勤、ウォーキング、ジム通い | 本当に機能差があるか |
| プレミアムスポーツウェア層 | 機能性と上品な見た目を両立したい | 新作、直営店体験、SNS | Nikeやlululemonで十分ではないか |
セグメンテーションは、ランニング、ライフスタイル、健康志向、プレミアムスポーツウェアです。ターゲティングは、機能とデザインに追加料金を払える都市生活者です。ポジショニングは、「スイス発の洗練されたプレミアム・パフォーマンスブランド」です。
4P分析
| Product | CloudTecを特徴とするランニングシューズ、トレーニングシューズ、アパレル、アクセサリー |
|---|---|
| Price | プレミアム価格。値引きよりもブランド価値と新しさを重視 |
| Place | 自社EC、約70のプレミアムブランドハブ、専門店、スポーツ小売、グローバル卸売 |
| Promotion | Swiss engineering、ランニングコミュニティ、アスリート、店舗体験、健康・移動のライフスタイルを訴求 |
起業に活かせること: 小さな会社でも、商品の機能名、体験、世界観を一貫させると、顧客が人に説明しやすいブランドになります。
SWOT分析
| Strengths | 高成長、62.8%の粗利率、DTC成長、独自技術、プレミアムなブランド認知、APACの伸び |
|---|---|
| Weaknesses | シューズ依存、プレミアム価格、急成長に伴う在庫・供給管理、ブランド認知の地域差 |
| Opportunities | アパレル拡張、直営店体験、アジア成長、健康志向、ランニング以外の日常利用 |
| Threats | Nike、adidas、HOKAなどの競争、模倣、為替、景気悪化、急拡大によるブランド希薄化 |
財務の見方
Onを見る時は、売上成長率、粗利率、DTC比率、卸売成長、地域別成長、アパレル比率を見ます。2025年は売上30.0%増、DTC33.7%増、Wholesale27.5%増で、直販と卸売が同時に伸びています。
粗利率62.8%は、プレミアム価格とフルプライス販売の強さを示します。一方で、純利益は2.04億スイスフランで前年から減少しています。成長投資、為替、費用構造もあわせて確認する必要があります。
成長仮説とリスク
- Market Penetration: ランニング顧客の買い替え頻度と複数モデル購入を増やす。
- Market Development: APACや新興都市でブランド認知を高める。
- Product Development: アパレル、アクセサリー、日常利用の靴を拡張する。
- Diversification: LightSprayなどの技術を軸に、新しいカテゴリー体験を作る。
リスクは、成長が速いほど「みんなが履いている普通のブランド」になりやすいことです。プレミアム感を守りながら販路を広げる管理力が問われます。
自分の起業にどう活かすか
Onの学びは、機能を「説明できる物語」に変えることです。単にクッション性があるのではなく、CloudTecやSwiss engineeringという言葉で記憶される形にしています。起業でも、技術やこだわりを顧客が覚えやすい名前にすると、紹介されやすくなります。
また、最初の顧客を本格派に置きながら、徐々に日常利用へ広げる流れも参考になります。狭い信頼を作ってから、広い市場へ進む順番です。
まとめ
On Holdingは、スイス発のプレミアムスポーツブランドとして、2025年に売上30.14億スイスフラン、粗利率62.8%、調整後EBITDAマージン18.8%を記録しました。
起業家にとっての学びは、成熟市場でも、機能、名前、世界観、販路体験を一貫させれば、後発ブランドでも独自ポジションを築けることです。