On Holdingを企業分析してみた:スイス発プレミアムランニングブランドの成長戦略

On Holdingの企業分析。2025年通期の財務、3C、STP、4P、SWOTを通じて、On Running、CloudTec、DTC、卸売、プレミアムスポーツウェアを起業視点で整理します。

Net Sales30.14億CHF2025年通期、前年同期比30.0%増。
Gross Margin62.8%プレミアム戦略が利益率を押し上げ。
Adj. EBITDA Margin18.8%調整後EBITDAは5.67億CHF。
APAC+96.4%アジア太平洋が急成長。

なぜOn Holdingを学ぶのか

On Holdingは、スイス発のスポーツウェアブランドです。On Runningとして知られ、CloudTecなどの独自技術、洗練されたデザイン、プレミアム価格で世界展開しています。

起業家目線で面白いのは、巨大ブランドが強いスポーツ市場で、機能性だけでなく「新しいブランドらしさ」を武器に成長している点です。Nikeやadidasと同じ土俵で戦うのではなく、健康、移動、都市生活、プレミアム感を組み合わせてポジションを作っています。

この記事の見立て
Onの強さは、ランニングの機能価値を入り口にしながら、都市生活者のプレミアムスポーツウェアへ広げていることです。一方で、高成長を維持するための在庫、販路、ブランド希薄化、競合模倣がリスクになります。

会社概要

会社名 On Holding AG
国・地域 スイス、グローバル展開
業種 ランニングシューズ、スポーツウェア、DTC、卸売
主な商品 Cloudシリーズ、ランニングシューズ、アパレル、アクセサリー
分析対象期間 2025年通期、年度末は2025年12月31日

ビジネスモデルの骨格

Onは、シューズを中心に、アパレルとアクセサリーへ広げるプレミアムスポーツブランドです。2025年通期の売上は30.14億スイスフランで前年同期比30.0%増、粗利率は62.8%、調整後EBITDAマージンは18.8%でした。

チャネル別では、DTC売上が12.61億スイスフランで33.7%増、Wholesale売上が17.53億スイスフランで27.5%増です。直営店・自社ECでブランド体験を作り、卸売で世界の専門店や小売店に広げています。

地域別では、Americasが17.40億スイスフラン、EMEAが7.63億スイスフラン、APACが5.11億スイスフランです。特にAPACは96.4%増で、グローバルブランドとしての伸びしろが大きいことを示しています。

3C分析

Customer: 顧客

顧客は、本格ランナー、健康志向の都市生活者、仕事でも休日でも使えるスポーツウェアを求める層です。単に速く走るためではなく、毎日の移動や自己管理の象徴として買う人も多いと考えられます。

Company: 自社

強みは、Swiss engineeringというブランドストーリー、独自ソール技術、軽量でミニマルなデザイン、DTCと卸売の両立です。2025年はアパレルとアクセサリーが合計で売上の7.0%まで伸び、シューズ専業からtoe-to-headブランドへ進んでいます。

Competitor: 競合

競合はNike、adidas、ASICS、HOKA、New Balance、Brooks、lululemonです。競争軸は、ランニング性能、デザイン、ブランドの新鮮さ、店舗体験、コミュニティ、価格帯です。

起業に活かせること: Onから学べるのは、成熟市場でも「新しい見え方」と「語れる技術」を組み合わせれば、後発でもポジションを作れることです。

顧客像・STP

Persona Needs Buying Trigger Key Objection
都市型ランナー 走れて、街でも浮かない靴が欲しい ランニング開始、買い替え、旅行 価格、耐久性、足への相性
健康投資層 日常の移動を快適にしたい 通勤、ウォーキング、ジム通い 本当に機能差があるか
プレミアムスポーツウェア層 機能性と上品な見た目を両立したい 新作、直営店体験、SNS Nikeやlululemonで十分ではないか

セグメンテーションは、ランニング、ライフスタイル、健康志向、プレミアムスポーツウェアです。ターゲティングは、機能とデザインに追加料金を払える都市生活者です。ポジショニングは、「スイス発の洗練されたプレミアム・パフォーマンスブランド」です。

4P分析

Product CloudTecを特徴とするランニングシューズ、トレーニングシューズ、アパレル、アクセサリー
Price プレミアム価格。値引きよりもブランド価値と新しさを重視
Place 自社EC、約70のプレミアムブランドハブ、専門店、スポーツ小売、グローバル卸売
Promotion Swiss engineering、ランニングコミュニティ、アスリート、店舗体験、健康・移動のライフスタイルを訴求

起業に活かせること: 小さな会社でも、商品の機能名、体験、世界観を一貫させると、顧客が人に説明しやすいブランドになります。

SWOT分析

Strengths 高成長、62.8%の粗利率、DTC成長、独自技術、プレミアムなブランド認知、APACの伸び
Weaknesses シューズ依存、プレミアム価格、急成長に伴う在庫・供給管理、ブランド認知の地域差
Opportunities アパレル拡張、直営店体験、アジア成長、健康志向、ランニング以外の日常利用
Threats Nike、adidas、HOKAなどの競争、模倣、為替、景気悪化、急拡大によるブランド希薄化

財務の見方

Onを見る時は、売上成長率、粗利率、DTC比率、卸売成長、地域別成長、アパレル比率を見ます。2025年は売上30.0%増、DTC33.7%増、Wholesale27.5%増で、直販と卸売が同時に伸びています。

粗利率62.8%は、プレミアム価格とフルプライス販売の強さを示します。一方で、純利益は2.04億スイスフランで前年から減少しています。成長投資、為替、費用構造もあわせて確認する必要があります。

成長仮説とリスク

  • Market Penetration: ランニング顧客の買い替え頻度と複数モデル購入を増やす。
  • Market Development: APACや新興都市でブランド認知を高める。
  • Product Development: アパレル、アクセサリー、日常利用の靴を拡張する。
  • Diversification: LightSprayなどの技術を軸に、新しいカテゴリー体験を作る。

リスクは、成長が速いほど「みんなが履いている普通のブランド」になりやすいことです。プレミアム感を守りながら販路を広げる管理力が問われます。

自分の起業にどう活かすか

Onの学びは、機能を「説明できる物語」に変えることです。単にクッション性があるのではなく、CloudTecやSwiss engineeringという言葉で記憶される形にしています。起業でも、技術やこだわりを顧客が覚えやすい名前にすると、紹介されやすくなります。

また、最初の顧客を本格派に置きながら、徐々に日常利用へ広げる流れも参考になります。狭い信頼を作ってから、広い市場へ進む順番です。

まとめ

On Holdingは、スイス発のプレミアムスポーツブランドとして、2025年に売上30.14億スイスフラン、粗利率62.8%、調整後EBITDAマージン18.8%を記録しました。

起業家にとっての学びは、成熟市場でも、機能、名前、世界観、販路体験を一貫させれば、後発ブランドでも独自ポジションを築けることです。

参考資料